【書籍レビュー #2】悩む力
本書のミソ
IQは遺伝で決まるが、IQがいくら高くても偏った判断をしてしまう。
頭が悪いから...と悲観する必要はない。前提を疑い、偏見に左右されない合理的な判断をする思考を鍛えることこそが天才に勝つ唯一の方法である。
クリティカルシンキングとは
- 思い込みを排除して、精度の高い証拠をもとに意思決定を行う思考
です。筋道立てて考えるロジカルシンキングに対して、クリティカルシンキングはそもそもの前提を疑います。
クリティカルシンキングができる人は、ざっくりと以下の特徴を持ちます。
- 本質を見つけようとする。共通点や特徴が気になる。
- 色々な分野からデータを集め、それらが本当に正しいかを調べようとする。
- 自分の好みに左右されていないか?と問いながら、たくさんの可能性を考える。
ようは好奇心旺盛で、ちゃんとした根拠に基づいて、たくさんの可能性を考えられる人ですね。
クリティカルシンキングの実践
「なぜ?」ではなく「何?」
疑問を持ったときには「何?」で考える癖をつけると、より合理的な判断ができるようになります。
たとえばプレゼンで失敗し
- (良い例)何が原因で失敗したのか
- (悪い例)なぜ失敗したのか
の二つで考えたとします。前者では被害者意識が減少し、より建設的な分析ができるとされています。後者だと、自分はどうせプレゼンが下手だから...とか悲観するだけで終わりそうです。
要するに「何?」で考えることで、一歩引いて分析できるためクリティカルシンキングのトレーニングになります。
ソクラテス式問答法
クリティカルシンキングの基本は自問形式で思考を整理することにあります。その時の指標がソクラテス式問答法です。
まず何か問題に対するアイデアを考えます。そのアイデアを以下の手順で整理します。
- どうして正しい(違う)と思うの?
- その根拠は「事実」と「感情」どっち?
- その根拠って本当に正しいの?
- 他の人だとどう考えるかなぁ?
- 偏った証拠しか調べてないんじゃない?
- 何か誇張して考えちゃってない?
- いつもの思考のクセが入っていない?
- 実は他の人の影響が入っていない?
- 上手くいきそう?最悪は想定している?
ちなみに他人に対して行う方が簡単です。客観的に行えるためです。そのときは上のテンプレに沿うのは難しいので
- 問題設定:方法、時間、具体的な例を聞く
- 前提:問題になった経緯、仮定を聞く
- 証拠:理由や理屈、実例などを聞く
- 視点:他に考えられないかを聞く
- 結果:結果や成功確率を聞く
- 疑問:どこでアイデアや疑問を思いついたか
の視点で聞いてみます。
例として、
- 配属先が叶わず仕事をやめようかと思っている
という友人に対しては
- 問題設定:「仕事が面白くないって予想しているから?」
- 前提:「配属先では本当にやりたいことができないの?」
- 証拠:「配属先が叶わなかった先輩はみんなつまらなそうなの?」
- 視点:「希望しない配属先だからできることはないの?」
- 結果:「配属先で面白くないと思う確率はどのくらいなの?」
- 疑問:「面白くないって感じたのはどんなとき?」
といった感じで質問を広げていきます。まぁ書いてて思ったのですが、会話の中でどの質問するかなんてイチイチ考えていられませんよね。
とりあえず、何が問題なのかという話のテーマを決めるとこに集中しましょう。そしたら臨機応変に「どうしてそう思うの?」「それって正しい?」「他にないかなぁ?」でなんとかなりそうな気がします。
ペンで行う弁証法
問題にはメリットとデメリットがあります。これらを書き出して、いいとこ取りしたアイデアを得るのがこの方法の目的です。
例)お金をかけずに休日を充実させたい
- メリット:休日を充実させたい
- デメリット:遊ぶとお金がかかる
この例ではメリット・デメリットというよりは「お金をとるか、遊びをとるか」というトレードオフの関係になっています。
ここから導く答えは一つではありませんが
- 休日に勉強してみる
という方法などがありそうですね。このように紙に良い点と悪い点を書き出すことで脳が新たな視点から働き出します。
CAT法
CAT法とは「短時間でとにかくアイデアを出して質問する」という方法です。時間制限が大事になる点でゼロ秒思考に近い方法ですね。
手順としては、何かのテーマについて5分以内で答えを書き出します。この時バカみたいな回答でもOKです。その後に
- どの回答が一番大事か?「難しそう...」などの印象や、それを感じた理由もあると良い。
- 何かわからないことはないだろうか?
- 以上を踏まえて何をすべきか?
で深めていきます。
具体例を見てみましょう。ここでは
- 新しい職場で楽しむにはどうすれば良いか?
というテーマを設定しました。これに対して
- 人間関係を良好に保つ
が一番大事だと感じました。これに対して
- 大事なのはわかっているけど、相手も知らなければ仕事もわからないからどうしようもない。
と思っています。ここに疑問を考えて
- どう振る舞うかは自分次第なのだから、自分主導で何かできないだろうか。そもそも会話が不安でどうすれば良いかわからない。
ということが浮き彫りになったので
- 対話不安の対策を調べてみよう。
という結論が出てきました。
この方法では時間制限によって、普段と異なる方法で脳を刺激します。短時間で本を読む場合にポイントだけを拾おうとするのと似ています。
これを応用すれば、熟考してうまいアイデアが出ない時はあえて時間制限を設けるという有効な手段にな理想です。
他人に判断の根拠を聞く
他人との議論でアイデアを洗練させることができます。しかし普通のディスカッションでは「自分のアイデアが一番だ」と思って参加し、バトルが起きてしまうことも多々あります。
そこで以下のポイントを押さえましょう。
- 自分の意見の優位性なんてどうでもいい
- どうしていいと思ったかの「根拠」をぶつける
議論は論破の場ではなく、より良いものを生み出す場所です。なので自分の意見を無理やり通そうとするのは愚の骨頂です。
人間は直感で判断してしまうことが多く、意外にも「それいいかも!」の根拠を答えられられません。そこで直感ではなく根拠に焦点を当てます。
また議論はなるべく価値観の異なる人で行うようにしましょう。同じ意見では偏見を打ち破るアイデアは生じにくいです。
事実を分析する
クリティカルシンキングを行うには事実ベースの思考が必要不可欠です。このトレーニングを紹介します。
その手順は以下の通り。
- 答えの出ない問いを決める
- 事実だけを書き出す
- ソクラテス式問答法で分析する
例えば
- 20代は貯金すべきか
という問いに対する事実は
などがあります。これに対して、例えば
- 20代でしか遊べないのか?そもそも遊びの具体例は?
とソクラテス式問答法を行います。
要するに、それってあなたの感想ですよね?を意識して議論を深めていくのがこのトレーニングのキモです。
クリティカルシンキング的計画
目標達成のためにWOOPの方法があります。ざっくり言うと
- 願望:何を達成したいのか
- 成果:ベストな結果は何か
- 障害:何が障害になるのか
- 計画:どうすればいいか
の手順になります。
ここで大切なのは「計画」です。以下の二点を守りましょう。
- もし〇〇なら××するで決める
- 好奇心に沿ってとりあえず試してみる
特に後者のポイントではソクラテス式問答法を用いて、これまで行っていない手法を試してみましょう。とりあえず試すの精神も大切です。